2012年2月10日金曜日

私たちは20世紀に生まれた:2012年02月

倫敦旅行直前から只中にかけて数多くの訃報に接した。その度毎に嗚呼なんということかと天を仰ぎ深く溜息をついたものだ。

1月5日  林光/作曲家/享年八十
1月8日  アレクシス・ワイセンベルク/ピアニスト/享年八十二
1月12日 別宮貞雄/作曲家/享年八十九
1月15日 布谷文夫/ロック歌手/享年六十四
1月16日 グスタフ・レオンハルト/古楽器奏者・指揮者/享年八十三
1月20日 エタ・ジェイムズ/R&B歌手/享年八十三
1月21日 石岡瑛子/デザイナー・AD/享年七十三
1月24日 テオ・アンゲロプロス/映画監督/享年七十六
1月25日 パーヴォ・ベルグルンド/指揮者/享年八十二
1月31日 ドロシア・タニング/画家/享年百一
2月1日  ヴィスワヴァ・シンボルスカ/詩人/享年八十八
2月1日  ゲルハルト・ボッセ/ヴァイオリニスト・指揮者/享年九十
2月3日  ベン・ギャザラ/映画俳優/享年八十一

いやはや、誰だって死ぬのだとはいえ、こう続くと気が滅入る。百を超したタニングや九十のボッセ翁はまあ大往生といえようが、八十代前半で亡くなる人のなんと多いことか。このなかでは撮影現場での不測の交通事故死だというアンゲロプロス監督、満身創痍の身で晩年も声を振り絞って歌っていた布谷文夫(そのステージ見聞録は→「ブルージーな朝帰り」、当日の舞台写真は→これ)の死がひときわ壮絶で衝撃的。痛ましすぎて言葉にならない程だ。

しみじみ惜しまれたのはフィンランドの名指揮者パーヴォ・ベルグルンド(ベルィルンド、ベリルンドとも)の死。地味だが燻し銀のような音楽を紡ぎ出す。実演を聴いたのは唯一回、それも出張先のサ ンクト・ペテルブルグでだ。

2001年1月14日(日)
19:00- サンクト・ペテルブルグ、フィルハーモニー・ホール
指揮/パーヴォ・ベルグルンド
サンクト・ペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団
ヴァイオリン/樫本大進*
曲目/
メンデルスゾーン:
序曲「フィンガルの洞窟」
ヴァイオリン協奏曲*
シューベルト:
交響曲 第七番
 

到着したその日、ホテルのフロントに頼んだら切符を取ってくれたので厳寒のさなかのネフスキー大路を歩いて聴きに行った。左利きの指揮は見た目にはちょっと奇異だが、流れ出る音楽はどの曲も誠実そのもの、余分な企みのない素直なアプローチが好もしく、とりわけ最後の「大交響曲」にいたく心うたれた。シューベルト嫌いの小生がである。たった一度の遭遇だが忘れがたい。

拙宅にはベルグルンドのディスクはごく尠ない。取って置きの一枚を。

"Mayumi Fujikawa & Paavo Berglund"
モーツァルト:
ヴァイオリン協奏曲 第三番、第五番
ヴァイオリン/藤川真弓
パーヴォ・ベルグルンド
指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

1971年11月29、30日、浦和、埼玉会館
東芝EMI TOCE-55407 (1971/ 2002)

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